生物に目を向けると見えてくる
この自然の戦いに対して、私たちは、強制的に農薬や除菌剤等による強制的な排除、建設等による環境破壊を行っています。
強制的な排除は、植物に害を与える生物(私たちは「害虫」と呼ぶ)の追い風として働き、建設等による環境破壊は、すべてを無にする、すなわち自分たちの手で砂漠化に導いているのです。
東京都の80%は、アスファルトとコンクリートで覆われていると言われており、これは、東京都の80%が砂漠化しているとも言えます。
生物の生活圏が狭く厳しくなっていくことで、多様性のバランスが崩れ、子孫を守るために耐性のある生物だけが増えてしまいます。
このことは、圃場だけでの話ではありません。
インフルエンザ、ノロウィルス、細菌・・・抗生物質を摂取し、抗菌や滅菌などの商品を使えば使うほどに、スーパーウィルスが毎年誕生していることなど、身近でも実感できると思います。
種のバランスや多様性を失うことの重要性や恐ろしさについて、様々なことを生物たちは教えてくれます。
見えない世界、小さな生物と植物との世界に目を向けることは、とても重要なことなのです。
生物に触れることから始まる無農薬・無化学肥料農業
自然界での森林の被食量は、1960年代で新葉の葉量の3~4% 、1990年代後半では10~20%(IBP(国際生物学事業計画))と発表されました。
HSS仮説によると、ボトムアップとトップダウンの2つの機能があり、ボトムアップは、植物自体が有する誘導防衛能力で植物は被食により進化するという説であり、
被食されると、毛、棘が生える、葉が固くなるなどの物理的防衛、植食者の唾液等に反応して防御物質に変る化学的防衛があり、化学的防衛はさらに質的・量的に分けられる。
一方、トップダウンは、「植物が第二次捕食者を呼び寄せ、第一次捕食者を捕食させる」機能であり、
炭素/窒素比(C/N比)が高くなると、その誘導防御能力も高まるという説です。
それでは、HSS仮説を不耕起農業、有機農業、慣行農業や様々な土壌環境など、多種多様な栽培法にどのように利用すれば良いのでしょうか。