福島の今は・・・
昨日まで福島に帰省しており、私の実家が所有している山とその周辺の農地の放射能値と農家の人たちの生の声を聞いてきました。
表向きには公共施設や住宅の除染作業が終了し、野菜や米については放射線検査を行うことで、風評被害もやや薄れ購入者も増えてきています。
が・・・、住んでいる方や農家の方の心境は、複雑なものがあります。
私が山を視察に行った後、近くで農家を営んでいる親戚の家を訪れたときの話です。
親戚:「山に何しに来たんだい?」
私:「まあ、放射能の影響で山でシイタケ栽培ができなくなったので、何か別のものでも植えて地域活性が出来るかなと思って見にきたんですよ。でも、放射能が中途半端に高いですね・・・」
親戚:「大学の偉い先生がよく訪れてくるよ・・・。完全に除染なんか出来ないのによ~何しに来るんだか・・・。それよりも、米の全俵検査のために今まで作業がかかったって疲れたよ」
私:「そーですか~。ところで、山に行く途中に立派な柿が実っていましたが、取らないんですか?」
親戚:「干柿を作れないんで、そのままなんだよ。食べるだけなら問題ないから、好きなだけもっていきなあ」
と、会話会話の間に、寂しさを感じ、近々農業を辞めるような雰囲気が強く伝わってきました。既に3.11以降は、リンゴや干柿の出荷をやめているそうです。それでも木には沢山のりっぱなリンゴや柿が実っています・・・この風景を見ていると、寂しさを感じることしか出来ませんでした。
他の親戚に訪れたときにも、「ちょっと山を見にきたんですよ」と、一言いっただけで、「放射能を計測するのだったら、検査器を貸すよ。・・・この地域も人が居なくなっているよ。子供を住まわすにはちょっと高いしなあ?仕方ないか・・・土地がいっぱいあるから、別荘でも作らないないかい?」と今の心境が分かる言葉が次から次へと出てきます。
そして、「家の周りだけを除染してもだめなんだよね。水は高いところから低いところへ流れるんだよ。こんなことは子供でも知っているよな。雨が降るたびに山の放射能濃度は下がり、人家近くの放射能濃度が高くなっているんだよなあ」
と言うように、人家近くの高い場所、真ん中、低い場所を測定してみると、1m程度離れた場所であるにも係わらず、一番高いところでは0.9μSv/hの数値を示す場所もあり、土表20~30m下の土の放射濃度が土表の濃度とほとんど変わらず、雨水によってどんどん浸透していっていることが計測できました。
野菜にとっては、0cm~40cm下の土が特に重要であり、その領域に放射能が浸透してきているとなると、これからが野菜に影響を与えるようになるのではないかと心配しています。
そして、ゆくゆくは地下水に溶け込んで、何処かへと流れてしまうのではないでしょうか?
今後も農業の視点で福島を応援していくつもりです。
農業科学応用研究所所長のつぶやき